服部植物研究所について

1946(昭和21)年に服部新佐博士によって設立された当研究所は、世界で唯一の蘚苔類研究機関です。在籍する専任兼任の十数名の研究員は、当研究所をはじめ、愛知県岡崎分室、高知分室、静岡県島田分室など各地で蘚苔(せんたい)・地衣植物の研究を続けています。また、研究にともなう関連資料の収集・整理および研究成果の出版をしています。
約47万点の標本を所蔵し、国内外の研究者に貸し出しを行っています。

研究テーマ

当研究所は日本及びアジアの蘚苔植物研究のセンターとして、研究活動を行っています。

平成21年3月31日現在、以下のような蘚苔類の研究資料を所蔵しています。


  •  蘚苔類標本 466,240点(内外国産240,011点、日本産226,239点)
  •  蘚苔類関係の図書 26,860点
  •  蘚苔類関係の研究論文別刷り 10,000点
  •  種名カード 100,000枚

研究業績

平成21年3月31日までに蘚苔植物に関する以下の研究業績を刊行しました。


  • 1.Journal of the Hattori Botanical Laboratory, No.1(1947)-No.100(2006)
  • 2.蘚苔地衣雑報 第1巻第1号(1955)-第9巻第9号(1983)
  • 3.Lawton, E., Moss Flora of the Pacific Northwest, 326pp.+195pic.(1971)
  • 4.同上。ペーパーバック版(1999)
  • 5.Schuster, R. S., New Manual of Bryology Vol.1, 626pp.(1983), Vol.2, 667pp.(1984)
  • 6.Glime, J. M., Methods in Bryology, 403pp.(1988)
  • 7.Noghchi, A., Illustrated Moss Flora of Japan, Part1, 242pp.(1987)-Part5, 241pp.(1994)
  • 8.Iwatsuki, Z., Catalog of the Mosses of Japan, 182pp.(1991)
  • 9.Iwatsuki, Z., New Catalog of the Mosses of Japan, 182pp.(2004)
  • 10.Yamada, K. & Iwatsuki, Z., Catalog of the Hepatics of Japan, 106pp.(2006)
  • 11.Crosby, M. R. & Engel, J. J., Index of Hepatics 1974-2000, 368pp.(2006)

研究所概要

研究所名 公益財団法人 服部植物研究所(英語表記 Hattori Botanical Laboratory)
住所 〒889-2535 宮崎県日南市飫肥6-1-26
設立 昭和21年3月1日
設立目的 植物特に蘚苔類を研究し、もって斯学の発展に寄与することを目的とする
特色 世界で唯一の蘚苔類専門の研究機関である
代表者 理事長 南壽敏郎
研究員 所長 片桐知之 理学博士
鈴木直 理学博士、吉村庸 理学博士、井上侑哉 理学博士、その他兼任研究員9名

所属研究員

所属研究員の氏名、略歴、研究業績及びテーマ


吉村 庸(専)
理学博士(東京教育大学)
昭和8年6月14日生。服部植物研究所研究員。その後、高知学園短期大学教授、学長。平成14年3月定年退職後、現在服部植物研究所高知分室長。日本地衣学会会長。

世界のヨロイゴケ科地衣類の権威。地衣類の分類のほか、含有成分の化学的な分析も精力的に行った。原色日本地衣類図鑑(保育社)のほか、現在までに地衣類の分類、生態、成分、生理に関する論文約180篇を発表。
水谷 正美(兼)
理学博士
昭和5年3月28日生。服部植物研究所研究員、現在に至る。

苔類のスジゴケ科、ムチゴケ科、クサリゴケ科などの分類の権威である。原色日本蘚苔類図鑑(保育社)のほか、現在までに苔類の分類及び生態の論文約190篇を発表。
鈴木 直(専)
理学博士(広島大学)
昭和21年12月17日生。島田市役所に勤務の傍ら、休日に野外調査のほか自宅で研究を続け、分類が非常に困難な蘚類のホウオウゴケ科及びコシッポゴケ科について、精力的に研究を行い、豊富な知識を得た。退職後、平成21年10月に服部植物研究所島田分室を開設し、研究を続けている。

絶滅危惧蘚苔類の調査、保護に尽力している。現在までに蘚類の分類に関する論文約70編を発表した。
出口 博則(兼)
理学博士(広島大学)
昭和23年4月5日生。広島大学名誉教授。元蘚苔類学会会長。

日本及び世界の蘚類の分類学的研究を精力的に続けてきたが、特にギボウシゴケ科の研究では世界的に認められている。コケ植物の形態学的な研究も多い。現在までに蘚類の分類及び分布の論文を多数発表。
長谷川 二郎(兼)
理学博士(京都大学)
昭和22年7月30日生。京都大学教養部・総合人間学部非常勤講師、大阪工業大学非常勤講師、同志社女子大学非常勤講師を経て、現在、南九州大学教授・学長。元日本蘚苔類学会会長。

植物の系統を研究する上で重要なツノゴケ類の研究を続け、多くの成果を挙げた。絶滅危惧蘚苔類の調査、保護に尽力している。現在までにツノゴケ類及び苔類の分類の論文約80篇を発表。
山田 耕作(兼)
理学博士(東京教育大学)
昭和9年8月22日生。三重県立宇治山田高等学校、三重県立松坂高等学校教諭、伊勢神宮司庁営林部嘱託などを歴任後退職。

苔類のうち、アジアのケビラゴケ科の研究を続けてきたが、近年は南米産の同科の研究も行っている。三重県、愛知県の蘚苔類の分布・保護について尽力している。現在までに苔類の分類の論文約200篇を発表。
湯沢 陽一(兼)
理学博士(広島大学)
昭和9年1月12日生。福島県立四倉高等学校、福島県立平商業高等学校その他の教諭を歴任、昭和58年~59年昌平黌短期大学(現東日本国際大学)非常勤講師を兼ねる。平成6年3月定年退職。

これまで苔類ヤスデゴケ科の研究を続けてきた。東北地方の苔類に詳しく、自然保護にもつくしている。現在までに苔類の分類と分布の論文約50篇を発表。
山口 富美夫(兼)
理学博士(広島大学)
昭和34年9月14日生。琉球大学理学部助手、現在広島大学大学院理学研究科教授。

琉球列島の蘚苔類の研究のほか、蘚類、特にシラガゴケ科、カタシロゴケ科の分類学的研究を行った。また、分子生物学的手法を使って、蘚類の系統を研究している。現在までに蘚苔類の分類・系統に関する論文約60篇を発表。
木口 博史(兼) 昭和30年8月31日生。現在埼玉県立庄和高等学校教諭。

日本の石灰岩地の蘚類について研究した。またこれまで分類が困難であった蘚類のセンボンゴケ科の種について研究を続け、豊富な知識を得た。絶滅危惧蘚苔類の調査、保護に尽力している。現在までに蘚類の分類・生態に関する論文約60編を発表した。
原田 浩(兼)
理学博士(広島大学)
昭和35年9月3日生。千葉県立中央博物館植物学研究科主任上席研究員。日本地衣学会会報Lichenology編集委員長。

分類が困難であった痂状地衣のアナイボゴケ科などの研究など、分類学的研究を精力的に続けている。博物館においては多くの共同研究委員との共同研究を行うとともに、多数の市民研究員の指導を行っている。現在までに地衣類の分類に関する論文約140編を発表した。
片桐 知之(専)
博士(理学)(広島大学)
昭和58年4月28日生。日本および東アジアのタイ類を中心に研究を進めており、特にムクムクゴケ科の分類学的研究では世界的に認められている。

さらにコケ植物の化石を対象とした分類学的研究にも取り組んでおり世界初となるヤバネゴケ科の化石種の発見・記載や日本最古(三畳紀)のコケ植物の分類学的位置の解明などの成果をあげている。現在までに蘚苔類の分類・系統に関する論文約30篇を発表。
原 光二郎(兼)
博士(バイオサイエンス)
昭和47年5月7日生。秋田県立大学生物資源科学部生産科学科植物資源創生システムグループ助教。日本地衣学会会員。

服部植物研究所の地衣類研究に吉村庸研究員の共同研究者として参画。現在までに地衣類の分子系統解析、分子機構の解析および環境適応能力に関する論文7編を発表。
井上 侑哉(専)
博士(理学)(広島大学)
平成元年7月19日生。日本および東アジアのセン類を中心に系統・分類学的研究を進めており、特にセン類の大きな科の一つであるセンボンゴケ科の系統・分類に精力的に取り組んでいる。現在までに蘚苔類の分子系統,分類,フロラに関する論文約20篇を発表。

研究所の歴史

昭和21年設立から現在までの歴史


昭和21年3月21日 故服部新次氏(初代理事長の父)の寄付による杉造林地約18ha評価額402,350円及び銀行預金100,000円を基本財産として設立された。
昭和22年4月19日 服部植物研究所報告第1号を発行、以降毎年発行し続けることとなった。服部植物研究所報告の発行は内外の多くの研究者に論文発表の場を提供し、特に多くの学位論文を掲載して、有能な研究者の育成に寄与し、日本の蘚苔類学を欧米の水準に引き上げた。
昭和23年 文部省民間学術研究機関補助金の交付を受けた。これ以降、毎年交付を受けるようになり研究所の内容を充実することができた。
昭和29年4月 研究所報告11号発行。初めて外国人研究者の論文を掲載した。これ以降、欧文の論文が多くなり、現在はすべて欧文で記載することとなる。
昭和33年7月 研究所報告20号発行。ページ数が300ページ台となる。この頃から、米仏の学会誌と共に4大専門誌と評価されるようになった。
昭和45年11月10日 服部新佐理事長紫綬褒章受章
昭和46年5月18日
~5月21日
日米蘚苔類セミナーを開催
(場所:国立科学博物館、参加人数:米国側16名、日本側8名、日米科学協力事業)
昭和52年1月19日 服部新佐理事長朝日賞受賞
昭和58年5月 The World Conference of Bryology を東京で開催するにあたり、服部植物研究所が中心的な役割を担った。この会議に出席した外国の研究者約30名を日南に招いた。
昭和59年1月 所長岩月善之助広島大学へ転出
昭和60年11月3日 服部新佐理事長勲三等瑞宝賞受賞
平成4年5月12日 初代理事長服部新佐死去
平成4年5月20日 杉田禮子、理事長に就任。
平成5年4月1日 愛知県岡崎市に岡崎分室を設立、理事岩月善之助が同分室長に就任。
平成11年8月 岩月善之助理事が国際蘚苔類学会副会長に選任される。
平成19年5月18日 南壽敏郎、理事長に就任。
平成23年4月1日 研究所内に常設展示場開設
平成29年4月1日 片桐知之、所長に就任。